01 フランクフルトからアウトバーンで

6月10日。
目が覚めたら、飛行機は高度を下げはじめていた。
うっそうとした森の中を走るアウトバーンや曲がりくねったマイン川
白壁とレンガ色の屋根の民家などが
薄い雲のフィルターを透過したやわらかな午後の光に照らされている。
この景色はボクのヨーロッパの旅のプレリュード。
今年も遂にヨーロッパにやってきたのだ!

フランクフルトの入国審査は、来るたびに簡単になる。
係官は、今回、遂にパスポートの表紙さえ見ようとしなかった。
バゲージクレームで荷物をピックアップし
誰もいない税関の検査台を通過したボクは
いつものHERTZレンタカーのカウンターに向かった。

今回借りるのは、例年より1クラス下の“C”。
マニュアルシフト、1600ccクラスの乗用車だ。
今まで何度か経験したアップグレードはなく
もらったキーホルダーには“Typ MONDEO”とタイプされていたが
モンデオなんて名前のクルマは知らない。

世界一大きく・頑丈なんじゃないかと思うフランクフルトのバゲージカートを
ゴロゴロ押してレンタカーパーキングまで行き
カウンターで聞いた番号札の下を見ると、フォード・モンデオがあった。
大きさは日本の5ナンバー枠いっぱい程度
トヨタのカムリと同クラスだ。

トランクがやたら大きく、バンパーから上が
“ガバッ”と全部開くのがヨーロッパ的。
これなら大きな荷物の出し入れも、そんなに苦にならない。
トランクの狭いクルマだったらどうしようという心配は解消した。
荷物を積んだだけで汗をかいた。
29度という機内放送はウソじゃなかった。

パーキングの建物を出ると、いきなり右側通行。
空港の敷地に沿ってぐるっと回ると、そこからすぐにアウトバーン。
走行5,000kmちょっとの新車だから、まだまだ慣らし運転が必要だ。
あと何千kmかはゆっくり走ったほうがいいので
とりあえず150km/hを上限に定めて
スイスのBASELに向かうアウトバーン[A5]を南下した。


ドイツのアウトバーンは
基本的に速度無制限。
ただ、合流や分岐のところは
たいてい100km/h制限だ。
標識の大きさにも
高速道路の速度の高さと
安全に対する配慮がうかがえる。


このあたりはアウトバーンの中でも最も道幅が広い区間だ
制限速度も、一部を除いて、ない。
(130) などという制限速度の標識や、その制限の終わりを示す標識に
アウトバーンを走っていることを実感する。
午後9時。あたりがようやく暗くなりかけた頃
[HOCKENHEIM]の標識が見えた。

ドイツGPの舞台・ホッケンハイムは、小さな町だ。
ミシュランの1:1,000,000(1cm to 10km)地図には
一番小さい丸で表わされている。
アウトバーンを下り、一般道を少し走ると
見覚えのある街並みにさしかかる。


ホッケンハイムは
フランクフルトから南に約100km。
マンハイムの南約25kmのところにある。
フランクフルトからこのあたりまでは
南北に走る[A5]と[A67]の2本を中心に
網の目のようにアウトバーンが
張りめぐらされている。


ホッケンハイムに来たのは2年ぶり。
前回はハイデルベルクに泊まって、木・金・土・日と通っていたが
今回はホッケンハイムの街外れにあるホテルを予約していた。
その“HOTEL ACHAT”は、古い街並みと田園地帯の境目にあった。
となりのマクドナルドの“MAC DRIVE”の入り口が
ホテルのパーキングの入り口だった。

建って間がない新しいホテルの部屋は
清潔で気持ちが良い。
1泊+朝食で、特別ディスカウント料金が96マルクだから
一昨年泊まったハイデルベルクの“HOTEL ARCADE”より、かなり安い。
アルカデはシャワーしかなかったのに
こっちはちゃんとバスタブ付きだ。

荷物を下ろしてさっそく電話をチェックしたら
壁側はドイツ式プラグだったが
電話機側は日本と同じモジュラージャック。
ドイツのホテルでこのテのジャック(RJ11)を見たのは初めてだ。
新しいホテルで、電話関係のシステムも
最新式のものが入っているのだろうか。

部屋への電話も、ホテルの番号+部屋番号で
外線からダイレクトにつながる。
これは便利でありがたいシステムだ。
客が不在のときに国際通話をして
ホテルのオペレーターと話しただけで
高い電話代を払わされる心配がないのだ。

夕食は、となりのマクドナルドで
シェフサラダとビッグマックとフィッシュマックと
カフェとヴァッサーを買ってきて、ホテルの部屋で食べた。
機内で十分寝ていたので、なかなか眠たくならず
ようやく寝たと思ったら、朝3時半に目が覚めてしまった。
今日からレースだというのに、外では冷たい雨が降っていた。