11 激走のトゥールーズ〜バルセロナ

トゥールーズからのオートルート[A61]は空いていた。
並行して走る一般道[N113]の整備が行き届いているから
わざわざ有料のオートルートを通るのは
バカらしいと考えるドライバーが多いのかもしれない。

確かに、フランスの一般道では
速いヤツは130km/hくらい出しているし
信号も、あるにはあるが、日本の比じゃない。
ずっと下を走って行ったとしても
バルセロナまで390kmだから
5時間あれば着くに違いない。
でも、気があせっていたので
ずっとオートルートで行くことにした。


トゥールーズから[A61]
(Autoroute des Deux-Mers)を
約150km走ると
地中海沿いのNarbonneに出る。
そこから[A9]に入って
Perpignanを通過すれば
間もなくスペイン国境。
バルセロナまでは
アウトピスタ[A7]で
約200kmの道のりだ。


1時間ちょっとで地中海岸のナルボンヌ(Narbonne)に出た。
ここからは海沿いの[A9]で国境まで行く。
84年のスペインGPからの帰り
2台のレーシングマシンやパーツを満載したベンツのトラックで
キャンパーを牽きながらのろのろと走って以来
通い慣れた道である。

海に突き出た砂嘴の上にできた
ポール・ルカトゥ(Port-Leucate)や
ポール・バルカレ(Port-Barcares)の街が
干潟の向こうに蜃気楼のように浮かんでいる。

アンドラへの入り口・ペルピニャンをすぎると
道はやや内陸に入り
蛇行しながらスペインとの国境に達する。
国境越えは、ここも簡単だった。
フランス側の係員は小屋から出て
“早く行け”と手を振っていたし
スペイン側の係員は
小屋の中に入ったまま出てこようともしなかった。

イミグレーションを通過してすぐ
両替屋があったので停車した。
スペインはカードの国だから
街中での飲食・宿代などはもちろん
ガソリンスタンドや高速
(アウトピスタ)の支払いなども カードでOKだ。


アウトピスタの料金所にある標識。
これだけの種類のクレジットカードが
通行料金の支払いに使える。
カードと硬貨専用のゲートは無人で
読み取り機に差し込んだカードは
1秒ほどで返却され、同時に遮断機が上がる。
利用者の利便を優先させたシステムとして
日本道路公団もぜひ見習ってほしい。


街角のいたるところにキャッシングマシンがあり
深夜・早朝でも使えることもあって
両替は、とりあえず3万円だけにした。
YEN JAPON : 30000.00は
PESETAS : 33025.00だった。
去年は100ペセタ140円くらいだったから
この下落はスゴい。
円高とオリンピック景気の消滅の両方が原因だろう。

両替屋は、各社のスペインの地図を売っていた。
ミシュランの青表紙、バルセロナ・プランもあった。
それを見た途端、家に忘れてきたことに気がついた。
ミシュランの青表紙(シティー・プラン)は
住所だけを頼りに目的地に行けるから
買わねばならない。


同じ色、同じ体裁の
“Paris Plan”は有名だが
これはそのバルセロナ版。
縮尺は1/12,000。
つまり、地図上の1cmが
実際の120mになる。
索引は完備しており
ほとんど毎年改訂されている。
バルセロナ観光には
欠かせない地図である。


ついでにPCを引っ張り出し
知人が泊まる予定のホテルの電話番号と住所をメモ帳に控えた。
“Hotel Royal / La Rambla 117”
索引で“Rambla, La”を引き、地図を見ると
そこは、ボクが去年のヨーロッパGP
(カタルーニャサーキットで開催)の帰り
半日だけだけどうろうろし、とても気に入った街路だった。
アウトピスタからランブラスまでの道順を頭に叩き込み
国境を後にした。

スペインの高速道路・アウトピスタは走りやすい。
都市部以外は基本的にすいているからだが
道幅は広く、カーブも、一部を除けばゆるやかである。
“慣らし運転はもういいだろう”と
勝手に決めたボクは、180km/h巡航に移った。

一応、スペインでは高速道路の最高速度は120km/hと決まっている。
誰もそんなにゆっくり走っちゃいないが
180km/hだと、おもしろいように他の車を抜ける。
登り坂には40〜50km/hのトラックなんかがいるから
これはちょっとしたゲームの感覚だ。

午後8時、バルセロナに到着。
信号待ちで地図を確認しつつランブラスに入り
Hotel Royalの前に車を停めた。