XJ900の爽快チューン
2009年4月27日 - フロントフォークの隅を突く(その2)アウター/インナー間のパーツたち
     
筒部分の表面(インナーチューブ内側下端部にあるバルブの摺動面)を、2000番のサンドペーパー+コンパウンドで研磨。
インナーチューブ内側下端部にあるバルブ。このバルブの作動により、圧縮時/伸長時のオイルの流路を切り替えている。
推定9万km使用したオイルシール。こんな状態でも漏れはなかったが、見てしまうと再使用する気になれず、交換した。
 その1に書いたフォークシリンダ
ーとテーパースピンドルのズレ対策(アウターチューブ底部のボルトの締めつけによって、各パーツが偏心しないように)をした後は、車体に取りつけたまま(アンダーブラケットでクランプしたまま)のインナーチューブ単体に、フォークシリンダ
ーやアウターチューブをはじめとする各パーツを取りつけていく。
 今回は“全知全霊をもって”の組み立てだから、フォークシリンダーの摺動面(筒部分の表面)を磨く…などということもやってみた。この部分は、右上の写真のインナーチュ
ーブ先端部内側に見える白い樹脂製のバルブ(3月27日の図の赤塗り箇所)を貫通し、フォークの伸縮に伴
って摺動するから、摺動抵抗の低減を狙って磨いたのだが、どれほど効果があるのかは疑問である。
 こんな感じの“ほとんど効果はないかもしれないが、まったくないとは言い切れないし、悪くなることはないはず”といったことの積み重ねが、トータルでの性能アップにつながるのだと信じている。

 続いて、いよいよ左右個々のサブアッセンブリーの組み立てである。インナーチューブを車体に取りつけたままではあるが、ここの手順は基本的にマニュアルどおりだ。
 インナーチューブを横倒しにできないので、フォークシリンダーの挿入には気を使う。放り込んだり落としたりすると、フォークシリンダー下端部がインナーチューブ内側下端部にあるバルブまわりの構造物(バルブストッパー兼リバウンドスプリング受け/オイルロック隙間を形成するスリーブなど、薄板を曲げたパ
ーツが多い)に衝突し、修復困難な変形が生じる恐れがあるからだ。
 で、私はいつも、インナーチューブ下端から棒を差し込み、その棒の先端にフォークシリンダー底部を載せ、静かに引き下ろしている。最近は、左下の写真の左側のように、シブイチ (1/4インチ角)のソケットレンチ用エクステンションバー(全長60cm)の先端に六角棒ソケットを取りつけて使うことが多い。
 これと前後して、インナーチューブの先端(スライドメタルが嵌まり
込む溝周囲)にビニールテープを巻き、ダストシールやオイルシールの挿入時にリップが切れないようにしておく。上から下に向かって(上から見て)反時計回りのらせん状にビニールテープを巻いた場合は、ダストシールやオイルシールを(リップ部にオイルまたはグリスを塗ってから)反時計回りにゆっくり回しながら静かに押し上げていく。昔から、どんなに急いで組むときでも、この手順を省略したことはない。
 アウターチューブ上端部に入るダストシール/クリップ/ワッシャ/オイルシール/ワッシャ/スライドメタルの6点セットを通した後、インナーチューブ先端部にスライドメタルを嵌めれば、インナーチューブ側の準備は完了である。これまた効果は疑問だが、上下のスライドメタルの合い口は、側圧がかかりにくい車体横方向に向け、アウターチューブ側とインナーチューブ側を逆向きにしている、エンジンのピストンリングの合い口の向きよりも、さらに意味のないことかもしれないが、とりあえずそうやって組んでいる。
棒に載せてフォークシリンダーを挿入/シールのリップ保護のビニールテープ/オイルシールまわりのパーツを準備したところ。
テーパースピンドルとワッシャのセットにも、シブイチの60cmエクステンションバーを用い、両者が貫通したままスライドさせた。
アウターチューブ底部にテーパースピンドルを置いたところ。何万kmにもわたって研磨されたアウターチューブ内面の美しいこと!
 アウターチューブ側の準備は、テ
ーパースピンドルとその中に入るワ
ッシャ(今回追加するパーツ)のセ
ットである。これにも細長い棒を用い、右上の写真のように、横倒しにして棒に通した後、徐々に起こしてスライドさせ、テーパースピンドルの底面がアウターチューブの内側底面に達し、ワッシャがテーパースピンドルの中に入ったところで直立させ、静かに棒を引き抜けば完了だ。
 ここから先のアウターチューブ組み付けは、とても慎重にしなければいけない。アウターチューブを持ち上げ、インナーチューブを挿入していくときに、インナーチューブ下端から突き出したフォークシリンダーの先端が(置いてあるだけの)テーパースピンドルにうまく突き刺さってくれればいいが、ヘタをするとテ
ーパースピンドルが倒れてしまう。
 外から見えない部分ではあるが、テーパースピンドルが倒れたり裏返
ったりすれば組み立てボルト(六角穴付き)が通らないから、そのまま組んでしまう心配はない。またアウターチューブの底にテーパースピン

ドルをセットし直し、再試行すればいいだけだ。ところが今回の私の場合は、ワッシャを1枚追加しているから、そいつが確実にフォークシリンダーとテーパースピンドルの間に挟み込まれてくれないとマズい。
 で、今回はまず、フォークシリンダーの中穴内径よりも小さい外径でロングブレードの+ドライバーをアウターチューブの底部穴から上向きに通し、それをテーパースピンドルとワッシャに貫通させ、ドライバーの先端をフォークシリンダー底部の穴に突き刺した(アウターチューブとインナーチューブ、そして、それらの間に入る全パーツを1本の棒で串刺しにした)状態にした。
 こうして、アウターチューブ底部穴から出たドライバーのグリップとともにアウターチューブを持ち上げていけば、テーパースピンドルが傾くことも、例のワッシャが飛び出すこともなく、目視確認と同程度の安心感を得ながら作業ができる。ワッシャを入れない通常の組み立てにもオススメしたい方法だ。
 あとは、アウターチューブを持ち
上げたままドライバーを抜き去り、インナーチューブ上端から覗き込んで、フォークシリンダーの中穴の向こうに整備台の板が見えるのを確認し、組み立てボルトを静かに締め込んでいけば良い。
 芯出しはあとでするから、ここでの組み立てボルトの締めつけは、とりあえずフォークシリンダーとアウターチューブの間のガタがなくなる程度でOK。そしていよいよ、オイルシールの打ち込みにかかる。
 実は、これもまた、今回初めて試した方法であり、偶然うまくいったとはいえ、常にうまくいく保証はないのでオススメできないが、できるだけインナーチューブをアンダーブラケットから外したくない私は、うまくいってほっとしている。
 で、その方法というのは、アンダ
ーブラケットをハンマーに見立て、下から勢いよく押し上げたアウターチューブの上に載せたオイルシールに衝撃を与えて叩き込もうというものだ。このとき、ダストシールも同時に叩き込むと力が分散してしまうので、オイルシールの上にジグを噛
スライドメタル/ワッシャ/オイルシール/ワッシャを所定の位置に圧入するため、古いオイルシールを切ってジグを作った。
インナーチューブをアンダーブラケットでクランプしたままで、まずは右側、続いて左側のサブアッセンブリーの仮組みをした。
ダストシールの下にジグを噛ませ、アウターチューブを上向きに打ち当ててオイルシールを沈めていく。ジグの取り外しは容易。
ませ、オイルシールにのみ衝撃が加わるようにした。ジグは、見てのとおり、古いオイルシールを半分に切り、合い口を数mm開けた物である。
 私のXJ900の場合、 フルボトム時のアンダーブラケット下端〜ダストシール上端間の距離は3mmで、そこに高さ6mmのオザワR&D製ストロークセンサーを取りつけているから、上記のジグと合わせて充分な叩き代がある。これがない場合は半割り型のスペーサーをアンダーブラケット下端にテープ留めするなどの対策が必要だろう。いや、それよりも、真似しなければ済むことだ。
 こうして、片側のサブアッセンブリーの仮組みが終われば、反対側も同様に組み立てる。両方の仮組みが

を外れると急に抵抗が小さくなるのでわかる)で往復させながら、徐々にボルトを締め込んでいく。あとで再度緩めるかもしれないが、緩めなかったときのことを考え、ここでは安全性重視の本締めである。
 フォークシリンダーの共回り防止に、インナーチューブ上端からフォ
ークシリンダーホルダーを挿入し、回りを抑える。私は、T型ハンドル
+長い六角棒ソケット+六角穴付きボルトにダブルナットを噛ませた物
+車載工具のプラグレンチの組み合わせを使っている。プラグレンチの外寸が、たまたまフォークシリンダ
ー頭部の12ポイント加工にピッタリだったから、見苦しいと思いつつ、ずっとこれを使っている。T型ハン

作動チェックをする。その方法と動き具合は 4月24日の本文左段に書いたとおり。パーツに損傷がなく、組み方が正しければ、オイルロックが効く直前まで持ち上げたところで手を離したアウターチューブは、自重でゆっくり下降するはずだ。
 オイルシールが新品だったり、フ
ォークオイルが固かったりして自重下降しない場合は、手を添えて下降させ、最初から最後まで同じ手応えでスムーズに動けば合格としよう。
 で、次はスタビライザーの取りつけである。これについては 4月23〜
24日にかけて書いたとおりだが、今回は“全知全霊をもって”なので、そのあとさらに、摺動抵抗を激減させる秘術を盛り込んだ。
終われば、左右それぞれのサブアッセンブリーにフォークオイルを10cc程度ずつ入れる。これは、オイルに浸かった状態でテーパースピンドルの位置を決めるためだ。そして、片方ずつ、アウターチューブをフルボトムさせたところで底部のボルトをいったん緩め、アウターチューブをオイルロックが効く範囲(この範囲
ドルの横棒をハンドルポストやミラ
ーステーに当てておけば、手で支える必要はなく、作業しやすい。
 締めつけが終わったら、左右にフ
ォークオイルを入れる。油面高さの調整はあとでするから、ここではとりあえず200ccずつくらい。 アウタ
ーチューブを下まで下げ、オイルロ
ックが効きはじめる位置までの間の

間に合わせのフォークシリンダーホルダー。写真に写っていない右側部分に、ソケットレンチ用T型ハンドルがついている。


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