XJ900の爽快チューン
2009年7月10日 - 10043kmぶりにエンジンオイルを交換異常のあったオイルポンプも交換した
     
ボルト穴にドライバーを突っ込んで吊り下げたオイルパン。異物がないことが確認できたので、洗い清めずに再装着した。
STDよりも目の細かいステンレスネットに張り替えていたストレーナー。異物の付着が皆無なのを見て喜んだのも束の間…。
カバーを開けた瞬間のクラッチ。もうすでに見慣れているはずなのに、毎度のことながら、各部の美しさには驚かされる。
 6月20日の“7周年記念”の朝練でライダーとしての復活を確認するとともに、爽快チューンの第一幕が終わったように感じていた。ライダーとしての復活の確認〜確信については、朝練直後の22日のダイアリーに書いたとおり。マシンの状態は非常に良く、過去最高に乗れているのを確認するような走りにおいても、積極的にサポートしてくれた。
 ただ、ライダーとして不満がなくても、メカニックとしてはまだまだやりたいことや、ライダーに確かめさせたいことがいっぱいある。
 直近の課題としては、間もなく1万kmに達するエンジンオイルの交換と、すでに入荷した新品のピレリ・スポーツデーモンの装着、そしてほぼ寿命が尽きかけているフロントのブレーキパッドの交換、さらに、前回の交換後 12000kmを走破したところで点検した結果、そろそろ替えどきと思われるステアリングヘッドベアリングの交換などが挙げられる。
 これら4点をさっさと済ませ、リフレッシュしたところが第二幕のスタートだと考えていたのに、今日まで取りかかれなかったのは、6月27日のツーリング以後、天候不順の影響もあって乗るチャンスが少なく、前回のオイル交換後の距離が、なかなか1万kmを超えなかったからだ。
 そんなわけで、ようやく1万kmを超えたのは7月4日。ウチに遊びに来たご近所のバイク仲間を見送りがてらいつものテストコースまで往復。その途中で遂に1万kmを超え、帰宅時には10043kmに達していた。

 ロングライフに定評のあるアッシ
ュのオイルといえども、空冷4気筒のオートバイで、ここまで引っ張った例はあまりないのではないだろうか。いくら体感の変化(シフトタッチの悪化や高回転域の振動の増加)がなく、見た目も問題なさそうとはいえ、いきなり無交換で1万km超を走ったわけではない。
 今のと同じFSE 10W-50を入れた初回は5183km、次回は6447km、3回目は7181km…と、徐々に距離を伸ばしてきた後にエンジンをオーバーホールし、その後の慣らしでは、慎重に1093、3524、2059、6314km…とオイル交換のインターバルを伸ばしつつようすをうかがってきた末に、ようやく達成した1万km超なのである。
 この1万kmの間、まったくと言っていいほどオイルが減らなかったのも特筆すべき点だ。エンジンオイルが減る原因には、バルブステム周りから燃焼室に入るオイル下がりやピストンリングから燃焼室に入るオイル上がりの他に、ブリーザーからの漏れが考えられる。これらがいずれも少ないから、減らないのである。
 おそらく、オイル下がりに関しては油膜強度の高さが、オイル上がりに関しては流動性の高さからくるピストンリングの動きやすさがもたらすシール性の高さのおかげである。
 一方、ブリーザーからの漏れの少なさは、オイル上がりが少ないのと同様、ピストンリングのシール性が高いため、吹き抜けが少なく、ブロ
ーバイガスの量そのものが少ないからだと考えられる。加えて、常にオ

イルレベルを低めに保つことで、エンジン内各部での撹拌によるオイルの霧状化を抑えているのと、元から油気分離能力の高いXJ650〜900系のブリーザー経路に、さらにステンレスたわしを充填し、オイルミスト捕捉効果を高めているからだろう。
 これらの“減りの少なさ”に結びついているであろう油膜強度の高さと流動性の高さは、どちらも、増粘剤を使わないことによってロングライフを実現しているアッシュの耐久性をさらに高めているはずだ。
 高温時の粘度低下を緩和するために膨張した増粘剤(=ポリマー)が剪断されてスラッジ化し、潤滑成分は生きているのに粘度が保てず、必要な油圧が得られずにエンジンオイルとして使い物にならなくなる、いわばエンジンオイルの自己破壊とでも呼ぶべき現象が起きなくても、混合気や未燃焼ガスの吹き抜けが多ければ、それによってオイルが希釈されたり汚れたりするからだ。
 だから、増粘剤に頼らずに高温時の油膜強度を確保し、ピストンリングからの吹き抜けが少ないから汚れにくい…という二大特徴を持つアッシュのエンジンオイルが、群を抜いたロングライフなのは、むしろ当然のことである。5000kmで交換するのはもったいない。美味しいところだけ味わうとしても7000〜8000kmは充分に使え、1万kmに達しても目立った性能低下やフィーリングの悪化を感じない。驚異的な潤滑性能の高さに加え、この耐久性! コスト・パフォーマンスも抜群である。
まるで旋盤加工の“目”のように、スジだらけになったローター外周面。異物が噛み込み、回転しながら横に移動したのだろう。トラブったオイルポンプ(左)と、XJ750Eから外した程度の良いポンプ。右のように光沢を持っているのがローター本来の姿だ。
ヒドい傷にもかかわらず、ローターにもハウジングにも変色やカジリはない。これもアッシュの潤滑能力の高さのおかげだろうか。
 オイル交換と同時に、少々問題を抱えていたクラッチを点検した。高いギア/高回転での急加速/高温/路面の不整による激しい揺れ。これら4つの条件が重なったときだけ、ふわ〜っと、車速の伸びを追い越すような感じでエンジン回転の上昇が高まり、知らぬ間に収まる…といった症状が出ていた。前回のオイル交換以後少々走ったあたりからだ。
 バラしたクラッチプレートとフリクションプレートの厚さを測定した結果は、いずれも使用限度内、というより、新品の基準値とほとんど変わらない。減っていたとしても、ノギスの測定誤差以下のレベルだ。
 しかし、取り出したクラッチプレ
ートとフリクションプレート、そして手持ちの中古のクラッチプレートとフリクションプレート。これらでできる4通りの組み合わせそれぞれの組み立て総幅を測定してみると、最厚と最薄に 0.5mmの差があることが判明した。で、もちろん今回は、総幅が最も厚くなる組み合わせ、つまり、取り外したクラッチプレートと手持ちの中古のフリクションプレ
ートの組み合わせを選び、しばらくようすを見ることにした。
 続いては、いつものオイル交換時と同じくオイルポンプの点検だ。まずはストレーナー。 STDの物より目の細かいネットに張り替えているから、詰まり(異物の付着)がないかどうかのチェックは欠かせない。
 点検の結果、エンジンオーバーホ
ール後、今回初めて、まったく異物の付着が見当たらなかった。何もせず、そのまま組みつけても問題ないと思ったほどである。
 ところが、ドリブンギアを手で回してみて、抵抗が大きく、スムーズ

さにも欠けるような気がした。さっそくバラしてみると…何と、ロータ
ーの外周面がギザギザではないか!
よく見るとハウジング側も! さらにシャフトの一部にも同じような無数の引っかき傷が見つかった。
 カムシャフトジャーナルやクランクまわりの軸受け部が同じようなことになっていたら…と考え、一瞬、顔面が引きつった。だが、オイルポンプを出たオイルは、オイルフィルターを通ってからエンジン各部に圧送されるから、ポンプを傷つけた異物が他の場所に入り込んで悪さをするとは考えられない。
 それにもしも、カムシャフトジャ
ーナルやクランクまわりの軸受け部が傷だらけになっていたら、出てきたオイルにアルミや鉄の摩耗粉がい
っぱい混ざっているはずである。そういった痕跡がなかったということは、原因となった異物も、それによ
って削られたオイルポンプの摩耗粉も、どちらもオイルフィルターに捉えられたと考えるのが素直だ。
 …というわけで、丹精込めて仕上げたオイルポンプに見切りをつけ、ガレージ内に放置しているXJ750Eのオイルポンプを外し、簡単な整備の後に装着した。パーツリストによると XJ750EとXJ900のオイルポンプは共通部品だから、互換性に関してはまったく問題はない。丹念に面取りと表面のバフがけを施したリリーフバルブのみ、壊れたポンプから移植し、ストレーナーカバーの吸い口の向きを前後逆にし、ドリブンギアと駆動チェーンは元どおり、XJ750EやXJ900とは異なる XJ900S(ディバージョン)の物を装着して STDよりも回転数を高めて取りつけた。
 こうしてトラブル対策は終わり、

オイルパン、オイルフィルター&カバー、クラッチカバーなどを取りつけた後、オイルレベルが点検窓の下あたりに来るように、前回と同じア
ッシュのFSE 10W-50を注入した。
 あとは、4-2-2集合部分、 左右のマフラー、4本のエキパイを取りつけ、エンジンを始動して軽く暖機をし、オイルレベルを微調整するだけである。自己基準は、センタースタンドでマシンを停めた状態で、エンジン停止後1分以上数日以内の油面が点検窓の下限ギリギリ…である。
 ストレーナーカバーの吸い口を前後逆にしているのは、オイルレベルが低いのに加え、 STDよりもブレーキを強化しているからでもある。クランクケース内のオイルは、加減速に伴って前後に移動する。一般市販車の吸い口が後ろ寄りにあるのは、仮にウィリーしてもエアを吸わないようにするためである。
 しかし私はウィリーなどしないから、後ろ寄りにあるよりは前寄りにあったほうが良かろう…というわけで、オーバーホール以来、前寄りにしていた。“FZ400Rレース用チューニング方法と実施手順マニュアル”
という資料(1985年、ヤマハ・モータースポーツ普及課)に書かれているチューニングのひとつである。
 で、排気系パーツを組み付け、エンジンを始動したところで、またしても思わぬトラブルに見舞われた。始動と同時に“バチバチバチ…”と激しい音! メカノイズでないことはすぐにわかったので、しばらくエンジンを回したまま音源を特定。1番気筒のエキパイを留めているスタ
ッドボルトが抜け出し、排気漏れを起こしているとわかったところで作業を終え、対策は翌日に回した。


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