XJ900の爽快チューン
2010年1月17日 - クランクケース内圧について考える - リード式減圧バルブのテスト   
     
 去年末のある日、レデューサーなるものが送られてきた。送り主は、
マエカワエンジニアリングの前川さん。この製品の開発者であり製造元の社長である。前川さんとは面識があり、3〜4年前に、彼が造った片持ちスイングアームの SR500改に試乗させてもらったことがある。
 その彼が、リードバルブ方式の新しいクランクケース減圧バルブを開発し、商品化したのは知っていた。去年の夏ごろには、試してみないか
…とのお誘いもいただいた。だが、テストするには、自分が使っている吸入負圧を利用した強制減圧システムを外さなければならず、面倒なのと、たまたま忙しい時期だったのが重なり、延び延びになった末、いつしか忘れ去ってしまっていた。

 その後、マエカワエンジニアリングでは、2枚リード、4枚リード…とブレードの数を増やす方向でバリエーションを拡大していた。今回送られてきたのは、それらのうち、1枚リード/2枚リードの2種類だ。
 私のマシンが動かない状態なのを知っているのに、試してくれとも紹介してくれとも言わず、ただ送ってきてくれたのには、深いわけはなさそうだ。あるとすれば“阿うんの呼吸”というヤツだろうか。好きにしてください…みたいな先方の気持ちに、好きにさせてもらうぜ…みたいな私の気持ちがうまく呼応すれば、何だか楽しそうなこと、予想もしない展開がありそうな気がした。
 レデューサーの現物を見た途端、私には3つのアイデアが同時に浮か

んだ。ひとつは、自分以外のマシンに取りつけてテストしてみよう…ということ。残りのふたつは、これを使った、自分のマシン専用の新しい減圧システムに関するものである。
 自分のマシンの新しい減圧システムについては、電装系配線類の一新
&エアクリーナーボックスの新造と並行して、じっくり考えながら事を進めるとして、誰かのマシンに装着したテストは、すぐにでもしたい。
 …というわけで餌食になったのが箱付きさん。バイカーズステーションの2010年1月号P.97に出ているH-Dスポーツスター883のオーナーだ。
 箱付きさんがテストの準備を進めている間に、私は、 RACERS第2号を持ってカスノモーターサイクルに挨拶に行ったついでに、社長の糟野さ
レデューサー3種。内部のリードの数は、左から順に4枚、2枚、1枚。本体(外筒)外径は、それぞれ42、30、25mmである。
んにレデューサーの話をした。なぜ私がRACERSを持って行ったのかは、
昔のBS誌の記事を、なぜレデューサ
ーの話をしたのかは AELLAのHPを見ればご理解いただけると思う。
 箱付きさんに話を戻すと、どうやら、スポーツスターのエンジンに通常の方法(シリンダーヘッドから出ているブリーザーホースにレデューサーをつなぐ)で装着した場合は、効果はあるものの、1枚リードと2枚リードの差はほとんど感じないとのこと。おそらく、もとからシリンダーヘッド内に装着されているアンブレラバルブ(減圧効果あり)がよく効いており、それと直列に装着したのではレデューサーの性能が発揮しにくいので、思ったほど効果を得られなかったのだと考えられる。
 やはり、レデューサーのような大口径バルブの能力を充分に発揮させるためには、スポーツスターであれば、アンブレラバルブが効かないようにしたうえで、別の箇所に大口径のブリーザーを設け、そこに接続するのが良さそうだ。これについては
もっちゃんさんが準備を進めているので、結果を楽しみにしている。
 箱付きさんのテストが一段落し、正月休みが終わったところで、2種類のレデューサーをカスノモーターサイクルに持ち込んだ。試乗車を用意し、 それ用のAELLAのバルブ(モ
ーターブレスシステム)とレデューサーの比較テストをするためだ。これまた、どちらが言い出したわけでもなく、阿吽の呼吸で自然に決まった。ボスは糟野さんだし、 AELLA担当の古屋クンは私の中学時代の同級生であり、現役メカ時代の最初のライダーでもあるからだ。
 比較テストをすることが決まってから、私は、事後承諾なのは承知のうえで前川さんに電話をし、このテストにお誘いした。日程は、準備ができたあとで古屋くんが連絡してくれることになっていた。
“遅くとも1月中にはテストできるかな…”と、のんびり構えていた私のところに、この日の昼前に急に電話があった。「これからテストするぞ!」とのこと。のんびり構えつつも、その可能性を頭の片隅に置いていた私はカスノモーターサイクルに急行。箱付きさんとともに、テスト車となったDUCATIハイパーモタードに試乗させてもらった。

1枚リードのレデューサーを分解したところ。両端のホース取りつけ部は交換可能。手前に並ぶのは各サイズの取り出し口。
 あまりに急なので、前川さんに連絡するのを忘れていて、そのことを糟野さんに話すと「そんなもん、オマエ、今から呼んだらええやん。すぐ来よるって。こういうときにケツの重いヤツはあかんねん。行く!と決めたら、すぐ!やないとあかんのよ。え? どこ? 岐阜か…。今からやったら、1時間もあったら着くやろ(笑)」…との人生訓を賜った。
 電話をすると、前川さんは笑っていた。そして、すぐに出発し、私と箱付きさん、そして飛び入りのとなかいさんが、バルブなし/レデューサーの1枚/2枚/アエラの4種類を順番にテストしている途中で、新製品の4枚リードのレデューサーを持って現われた。古屋クンが速攻で取りつけてくれたおかげで、4枚リ

ードにも試乗することができた。
 試乗した3人は、それぞれ、異なるコースを、まったく違う走り方でテストしていたようだ。私は、追い越し加速を想定した 4000rpmあたりからの急加速時の回りっぷりと、エンジンブレーキおよびアイドル時の振動の大きさと波形、そして始動性に的を絞ってテストをした。
 効く/効かないで言えば、どれもよく効く。バルブなしには乗りたくない。それとともに、3種類のレデ
ューサー(汎用)とアエラ(専用)の4つの製品それぞれに“ここではこれが、他の3つよりもいい”というシチュエーションがあるのがわか
った。その体感の違いの原因を解明するのが、私にとって、難しくも楽しい今後の課題になりそうだ。


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