XJ900の爽快チューン
2011年5月21日 - 朝練復活。鯖街道の走りと他車試乗で、自車の問題点が明らかに   
     
スーパーカブ70で現われた、CLUB XVの喫茶久保さん。この笑顔に惚れて(冗談)、特大サイズでご登場いただいた。
“鯖の女王”を名乗るマシンだから初ツーリングの舞台は鯖街道以外に考えられない。当初は土曜日に近場でキャブセッティングを詰め、日曜日に初ツーリングと考えていたところ、日曜は天気が悪そうだし、キャブセッティングもそれほど外れていないことがわかったので、急遽、土曜の早朝出発に予定を変更した。
 京都府最南端の自宅を5時ちょうどに出、和束川沿いの道を北上→信楽川沿いの道を琵琶湖畔へ→湖岸を琵琶湖大橋東詰へ→ 国道477号を途中(地名)へ→鯖街道(国道367号)
を朽木の道の駅へ…というのが、この日の前半のルーティング。
 何しろ1年半ぶりの遠出なので嬉しくてたまらず、点火時期を全域で2度早めた(一昨年秋にピストンヘ
ッドとバルブフェイスの焼けすぎを見つけた後、2度遅らせていたのを

感じた上のほうのトルクの盛り上がりが、 4000rpmあたりから上で感じられるようになったこと。しかし、その 4000〜6000rpm間に上乗せされたトルク感を得るには、 6000rpm以上のように“即”ではなく少々“待ち”が必要なこと、などである。
 極低回転で定速走行中にスロットルを戻すと、一瞬間をおいて(チェ
ーンドライブのマシンのチェーンがエンジンブレーキで逆に張るまでの間の空白感に似る)少々強めにエンジンブレーキが効くのに、次の瞬間にそれが弱まり、以前と同じく強制減圧エンジン特有の滑走感が感じられる…という違いにも気がついた。
 これらの症状をもとに、どこをどうしたからこうなったという仮説をたて、それに基づいてセッティングを変えてみてアタリをつけ、悪いところを抑え、良いところを伸ばすの

除き、タイトコーナーはひとつもない。ほとんどが、その気になれば3桁台の速度を保ったまま通過できそうでいて、ゆったりと景色を眺めながらのクルージングにもまた格別な味わいのあるコースなのだ。
 そこで緩急いろんな速度での走りを試したところ、コーナー入り口で何度も違和感を感じた。ゆったりした走りで、スロットルの戻しだけで入っていくような大きなコーナーの入り口で顕著に現われる違和感の原因は、以前なら旋回を始めていた程度の入力(左右方向への体重移動)では何事もなく直進を続け、ワンテンポ遅れて以前よりも強い旋回力が生じる…という症状である。
 一気に大きな入力を与えるタイトコーナーではまったく気にならない(むしろ歓迎して利用すべき)症状とはいえ、この部分の敏感さと素直
元に戻した)のが正解で、道がガラガラに空いていたことも手伝い、鯖街道に入るまでは、エアクリーナーとプラグコードを一新したエンジンの実力を探る走りに終始した。
 そこでわかった改造前のエンジンとの違いは、振動の出方が回転数に関わらず一様になり、以前よりも低減した回転域もあれば増大した回転域もあること。しかし、平均すればわずかに低減しているような気がすること。振幅は小さくなっているのに対して波形は少々粗雑になっているような印象で、以前のが“ぷるぷる”なら、今度のは“ざわざわ”とでも形容できそうなこと。
 スロットル操作に対するエンジンの反応は、 1800〜2500rpmあたりでわずかに力感が痩せた(功罪半ば)こと。 従来は6000rpm以上で強烈に

が今後の目標となりそうだ。
 で、車体まわりのことなどすっかり忘れたまま(しかし、高速コーナ
ー旋回中の安定感と旋回力の高さは存分に味わいながら)鯖街道に入ると、途端にエンジンから操安性にセンサーの対象が切り替わった。
 いくつかあるトンネルの最後の1本を抜けたところにある急な左カーブから先、右岸から左岸に渡る橋を渡り終えたところの急な右カーブまでの間は、これまでに何度走ったか数え切れないくらい通い慣れた道である。以前に、どの仕様のとき、どのコーナーで、マシンがどんな反応をしたか…という比較基準を体で覚えているから、操安性のテストには私的に最適のコースといえる。
 上に書いた区間には、両端の急カ
ーブの他は、最後の橋の手前の左を

コーナー入り口での挙動の違い。二重線で示したのが従来の印象で、太線で示したのが現状の印象。タイトコーナーやスポーティーな走りのときはこれでいいが、まったりツーリングでは、もっと敏感に、しかしゆっくりと反応してくれる車体が望ましい。
2台のXJ750EとXJ900。四半世紀以上前のバイクを、当時より四半世紀近く年齢を重ねたオヤジたちが熱く語る…の図。今回の改造中、仮想ライバルとして常に頭の中で描いていたXJR1200むらかみ号。手前はお連れさんのGPz1000RX。
さを追求するチューニングを続けてきた私にとっては、甚だ心外な結果という他に言葉が見つからない。
 ただ、遅れを予測して早めにアクションを起こし、従来よりも骨盤の傾き(イン側が低い)を大きく、わずかに上体を外側に起こし気味かつ若干前寄りに構えた態勢でアプローチすれば、極めて高い安定性を保ったまま旋回を開始し、スロットルを開けはじめてからは、高まった内向性を感じつつ従来以上の速度と安心感でコーナーをクリアできるから、この新しい特性は捨てがたい。
 事前のいい加減な予想より1時間も早い6時半に朽木の道の駅に着いて、 BBSに書いた予想到着時刻を頼りにやって来る人がいるかもしれないので、とりあえず7時半までは待とう…と、建物裏の川に面したベンチに腰かけ、新しい操安性の原因と対策について、あれこれ考えを巡らせた…つもりなのに、ひょっとすると居眠りしていたかもしれない。
 ふと時計を見ると7時半近かったので、バイクのところに戻ると、となりに見慣れたシルバーのXJ750Eが停まっていた。コンプライアンス・かわぐち号である。ライダーはいずこ…と探すと、道向かいのコンビニから出てきたかわぐちさんが、こっちに向かって手を振っていた。
 しばらくすると、 南からXJR1200のむらかみさんと GPz1000RXのお連れさん、北からXJ750EのYajiさんがやってきた。さらに、やや間をおいて、北からスーパーカブ70に乗る喫茶久保さんも登場。2年以上前の朝練や変態オヤジツーリングのときと変わらず、この素晴らしいオヤジた

ち(笑)との、心なごむひとときは、1シーズン欠場した私にとって、まるで先週の続きのように素直に溶け込め、楽しく心地よいものだった。
 かわぐちさんの「すんまへん、ち
ょっと…、乗へてもらえまへんやろか?」の言葉(本当はもう少し薄い京都弁)を合図に、4台のヤマハ製4気筒車の交換試乗会が始まった。
 これは1年半ぶりに朝練に復帰した私にとって、大きな衝撃だった。
以前は道の駅の駐車場を出る前に危険を感じて(サイドカーよりもハンドルを切るのに力が要った)試乗を中止したYajiさん号が、まるで別物の優秀なハンドリングのマシンに進化しており、かわぐち号は以前に試乗させてもらったときよりも全体に若返った感があり、完璧に同調した4つのキャブのおかげで、とてもスムーズな加速を味わわせてくれ、むらかみ号は以前からの足のよさをさらにグレードアップしており、中でもブレーキの効きとフィーリングは絶品と言えるレベルに達していた。
 そういえば、この日の私のマシンは、ブレーキにも少々問題を抱えていた。効きが弱いうえ、フィーリングが最悪だった。以前は、赤ん坊と握手するような握り方で、すり鉢で胡麻を摺るような小気味よい感触が得られたのに、現状は、いくら握ってもほとんど変形しない野球の硬球を握るような感じの手応えと、おろし金で、しなびた生姜を摺るような雑な感触しか伝わってこない。
 むらかみ号の絶品のブレーキとバランスよさそうなエンジン、2台のXJ750Eの素直な操安性と軽やかなエンジンを味わい“この1年半の間に

オレがやってきたことは、いったい何だったんだ…”と、頭を抱えた。
 ところが、ここで京都勢と別れ、岐阜に帰るYajiさんといっしょに琵琶湖畔・和迩のブルーカフェに向かうべく自車に乗り、交換試乗前には気づかなかった良さを発見した。
 スロットル開け始めのエンジン反応の唐突感のなさ、エンブレ時の静粛性、交差点右左折時の安定感などである。逆に、新しく気づいた欠点もある。足つき性の悪さ、加速時のシフトタッチの硬さなどが一例だ。
 ブルーカフェに着き、みんなが見ている前で、工具なしで外れる外装パーツをすべて外して自慢&解説の後、店主の稗田くんが試乗した感想も、さきほどの交換試乗のときと似たり寄ったりだった。「あの、ほんわかした優しい感触、まったりした味がなくなってますね」とのこと。
 その言葉はそのまま、ほとんど私が今日感じた印象と同じであり、自分のバイクだから遠慮なく攻めることができるオーナー本人にしか、今回の改造で操安性の良くなった部分は味わえないのかもしれない。
 う〜む、これは相当に手強い相手に成長したかも知れんなあ…と思いつつ、たった1回の朝練でここまで細かな評価が得られたのだから、現状をスタート地点とした新しい“爽快チューン”では、意外に早く落とし所が見つかるような気もする。
 このあと、どこかで最高速付近の操安性をチェックした後、今の旋回性(運動性ではない)と安定感を失わずに、高い応答性と軽快感が得られるよう、セッティングやチューニングを続けていきたいと思う。


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