XJ900の爽快チューン
2012年12月1日 - 点火時期を微調整しつつ、振動の出方を探りながら筑波に向かう
     
 今回の筑波行きは、得意の“全行程下道”ではなく、高速を利用しよう…と、最初から考えていた。理由は2つ。ひとつは、このマシンで高速道路を走るのが思っていた以上に楽しいとわかったから。もうひとつは、全行程下道で行った場合、暗いうちに出発するか、暗くなって到着するか、いずれにしても、このクソ寒い時期にナイトランをしなければならず、それを避けるためである。
 そこで、高速利用で予定を立ててみて、ウチから結城市のホテルまで行くのに、9時出発〜17時到着というのが最も良さそうな気がした。
 遅めの出発のおかげで、着替えや持ち物の準備は朝に回し、給油と掃除のみ、昨夜のうちに済ませた。
 着るものは、 2009年1月29日の取材行のときを参考に、上下とも発熱効果のある下着を着た上に、冬場の釣り用と思しきキルティングのツナギを重ね、上は緻密な綿のBDシャツ
+ハイネックのスウェット+ハイネ
ックのダウンジャケット、下はスリムのジーンズ+オーバーパンツ。
 これまで何度か試した経験から、
“貼るカイロ”の効用と、効果的な貼りつけ位置がわかってきたので、それに従い、キルティングのツナギの背中側の最上部に貼りつけた。この、よくあるフツーの貼るカイロを買ったとき、ついでに、半月形の靴下用も買っていて、道中で爪先が寒くてたまらなくなったときに使うつもりでタンクバッグに入れた。

 そして、大きさが手ごろな靴下用を1個、袋を破って効く状態にし、シート後部に載せるカバンの中に放り込んだ。カバンの中に入っているノートPCを室内に持ち込んだときの結露防止が目的だ。長時間外気にさらされた物を室内に持ち込むときはPCに限らず、結露には要注意だ。
 これにて準備完了。明け方の雨のせいで濡れていた路面も徐々に乾きはじめ、ウチの前の道を見る限り、クルマが走っても水しぶきが上がらない程度になったので、10時すぎに出発。 最初は国道163号で三重県に入り、伊賀市の大内インターから名阪国道に乗る、通い慣れた道だ。
 ここ数年で最も美しい状態にまで磨き上げたマシンが、ここまでの道でどれくらい汚れたかが気になり、大内で各部を点検。大したことがなく安心したのも束の間、名阪国道に乗ってすぐに、距離は短かったものの、わだちに水が溜まるほどの雨に見舞われた。が、雨雲レーダーに大きな塊は映っていなかったはずなので、かまわず走り続け、亀山へ。
 今日はここで1には降りず、そのまま走って東名阪道に入る。入ってすぐの亀山PAで再び汚れ具合のチェ
ック。今度も大して汚れてなかったので、ここまでのところ、タンクバ
ッグに入れてきた掃除道具には出番なし。今回は2泊3日の短い旅なので、着替えが少ない分、途中で掃除するための布、ブラシ、研磨剤入りワックスなどを持ってきたのだ。

 まだ1時間しか走ってないのに、売店にあった十勝餡ドーナッツと甘栗デニッシュが食べたくなり、それを買って少し早い昼メシにした。食べている間に空は晴れわたり、秋のような陽光がさしてきた。
 12時ごろに亀山を出発。東名阪道は珍しく空いており、少々風が強いのを除けば、気温もさほど低くはなく、天気も快晴に近い好条件の中を快走し、間もなく伊勢湾岸道へ。ここから東海市あたりまでは、伊勢湾に突き出た埋立地をつなぎ、それらの間の水路の上をいくつもの大きく高い吊り橋で跨いでいく。いつ通っても風が強く、緊張する区間だ。
 このマシンの横風に対する安定性は、過去3回にわたって大幅に向上している。1回目はリアショックをオーリンズに替えたとき、2回目はステアリングヘッドの作動性を高める改造を施したとき、3回目はバッテリーの移設をはじめとする重量配分の適正化をしたときである。
 これらのおかげで、横風の強さや方向が急変したときのマシンの進路や姿勢の乱れが小さくなり、ドキッとかヒヤッとすることはほとんどなくなった反面、巡航速度が高いときには、風を受けた乗り手の上体が帆船の帆のようになり、マシンに余分な動きを伝える場面があるようだ。
 カウリングを装着する、上体の姿勢を変える、速度を落とす、腰から上を軟体動物のようにするなど、いくつかの改善策の中で、最も現実的
新東名の新静岡ICをすぎたあたりから富士山が見えはじめ、清水あたりでは真正面に、陽光を受けた美しい姿が見えた。
なのは上体の姿勢だろうか。横風対策を抜きにして考えても、高速走行時には、もう少し上体が前傾したほうが良さそうだ。今のままで上体を支えようとすると、両腕でハンドルを引っ張るしかなく、速度が高まるにつれて、その力がどんどん増していくから、最後は懸垂をしているような辛さを味わうことになる。
 が、まあ、これは、私にとって非日常的な高速道路上での話なのに加え、かつてこのマシンでは(瞬間的に出したことがあるだけで)巡航したことのない速度域における現象でもある。仮に、上に書いた改善策を施したとすれば、日常域での心地よさが阻害される可能性が高いから、こんな走りをしないか、または懸垂状態を我慢すれば済むことだ…と、わかっちゃいるが(笑)、トップエンドまでスイートに気持ちよく回るエンジンの実力を、たまには味わいたい気持ちを抑えるのも辛い(笑)。
 そんなことを考えながら走っていると、あっという間に豊田ジャンクションから東名へ。新名神の接続により大幅に改良された東名阪道や伊勢湾岸道を走ったあとで東名に入っての第一印象は“古さ”である。道幅が狭く、カーブがキツく、舗装が荒れていて、おまけに防音壁や植え込みのせいで見通しが悪い(開放感がない)のが原因か。ここの最高速度が80〜100km/hなんだから、 伊勢湾岸道などは、120〜150km/hまたは速度無制限でも良いと思う。

 その思いは、三ヶ日から新東名に入って、さらに深まった。新東名が新幹線だとすると、従来の東名は在来線と言えるほどの差がある。これほど立派な道路を 法定速度100km/hのままにしておくのは、それこそ放置もいいところで、 最低でも120〜
130km/hの 最高速度指定にしていただきたいものだ。片側3車線区間で用もないのに延々と中央車線を走るクルマの指導/取り締まりと合わせて、静岡県警にお願いしたい。
 新東名でのXJ900は、 間もなく車齢22歳、積算走行距離12万kmを迎えるマシンとは思えぬ走りを味わわせてくれた。速さについては、入手以来、今が最速。しかし、それにも増して“この気持ちよさはどうよ!”
てな感じである。1台のバイクに5万
km以上乗った記憶はなく、15万km程度乗ったクルマの場合は10万kmを超えたあたりから明らかに性能低下と各部の劣化が著しかったから、このXJ900のタフさには驚くばかり。
 速さと気持ちよさに酔いそうになりながら新東名を快走していると、不思議なことに気がついた。6000〜
8000rpmあたりで、 ゴロゴロした微振動が出たり出なかったりするのである。そもそもこんな回転域で巡航した経験がないから、最初は“ここまで回せばこんなもんだろう”と、あまり気にしていなかったが、走っているうちに、トンネルに入ると急に振動が低減し、トンネルを出ると再び微振動が出ることがわかった。

 長いトンネルの多い新東名のおかげで、何度試しても再現することがわかり、ひょっとするとトンネル内とそれ以外の気温差による燃調のズレが原因ではないかと考えた。トンネルによっても違うが、アテにならない体感では、外よりもトンネル内のほうが5度程度気温が高そうだから、トンネルに入るたびに燃調が濃い方にズレるのかもしれない。
 だとすれば、燃焼時間が変化し、ピストンの頭を叩くタイミングが変わり、振動の出方に差が生じても不思議ではない。そこで、ASウオタニSP-II フルパワーキットのイグナイターについている進角補正ダイアルをいじれば、ひょっとすると、トンネル以外の場所で 6000〜8000rpm時に出ている“ゴロゴロ感”がマシになるかもしれないと考え、牧ノ原PAに入って調整することにした。
 しかし、もともとイグナイター本体に貼ってあったラベルを剥がしてしまっていて、ダイアルの0〜9までの数字の、どれにすれば何度、基本マップよりも進角度数が増減するのか、わからない。魚谷さんは土曜休みで電話がつながらず、何人かの知人にも電話してみたが、結局わからずじまい。こうなりゃ、いろいろやってみるしかない…と、このところずっと5だった進角度数調整ダイアルを7にして走行を再開した。
 走り初めて間もなく、7にしたのは失敗だったと気がついた。シートから坐骨に伝わってくる振動の感じ
藤枝PA/清水PA/海老名SAで点火時期を微調整。ダイアルの数字と調整度数の関係は、ホテルに着いてから調べた。発熱効果のある下着の上に着たキルティングのツナギ。その背中側首もとに“貼るカイロ”を貼った。この効果は絶大である。
では、5と7の振幅には大差がないものの、7のほうが主振動に混ざるノイズが多く、 5000rpmのスイートスポット(まるでどこかにエンジンを落としてきたのではないかと思うほど低振動な領域)も、7だと消えてしまうことが判明したからだ。
 再調整のために清水PAに入り、今度は3を試す。これまた、とくに振動が強まるわけでも弱まるわけでもなく、振幅は5や7と同程度。ノイズの量は5より多く、7と同程度。ただ、ノイズの質は7とは異なり、7が“もやもや”だとすると、3は
“ざらざら”といった感じである。ただ、 7だと消えてしまう5000rpmのスイートスポットが3では消えずに残っており、感触の良い順に並べると5−3−7だと言える。
 そんなことをしながら走っていると、新東名が終わって東名に合流。ここからは交通量が増えてテストにならないので、軽く流していると、思ったより早く大井松田あたりでリザーブに…。上に書いたテストの結果にも燃費にも少々ガッカリしながら、給油のため海老名SAに入った。ここでの給油量は19.41Lだから、燃費は22.67km/L。 悪い数値ではないが、東京まで無給油で行けるかも…と思っていたから、期待外れだ。
 点火時期については、ここまで試した3種類の中では、元の7が最も良かったので、さらに別のを試すか7に戻すか少々迷ったあげく、4にセットして続きを走ることにした。

 海老名SAから出てすぐに、これぞ
“大当たり”のような気がした。自分のマシンでは今まで体験したことのない、恐ろしく強烈な高回転域の吹き上がり!  8000rpmを超えてもぐいぐいと、重いマシンを力づくで加速させていくのがわかる。
 だが、このセットの麻薬的快感を味わうには、海老名から東京までの区間は交通量が多すぎ、おまけに日も暮れてきたので、 あとは5000rpmあたりをキープして淡々と走り、東名東京ICで降りて環八〜笹目通り〜目白通りを経て大泉ICから外環道に入った。ここまでの感触では、下道での4と5の差はほとんどなく、しばらく4のままで走ることにした。
 川口ジャンクションで外環道から東北道に入ると、さっきまで降っていたような感じのウェット路面…。しかたなく巡航速度を落とし、クルマの流れに乗って最後の高速区間を走りきり、佐野藤岡ICで降りた。
 ここから先は、出発前に頭に叩き込んだ記憶を頼りに、国道50号で結城市を目指すはずのところ、走りだしてすぐに“道の駅みかも”というのを見つけ、久しぶりの休憩。入ってみると、数台のバイクが停まり、レストランにライダーと思しき兄ち
ゃんたちの姿が見えた。ちょうどええ、ワシもここで晩飯にしよ…と、広島産かきフライ定食を食べながら兄ちゃんたちに結城市までの道を詳しく教えてもらう。旧道に入らず、すべてバイパスを走って、茨城県に

入ればすぐに結城市だそうだ。
 目的地は近いし、大して寒くもないので、ここではコーヒーも飲んだりしながらゆっくりして、19時すぎにようやく走行再開。兄ちゃんに教えてもらったとおりに30分ほど走ると、結城駅に近いホテルに着いた。
 チェックインして、すぐにノートPCをネットにつなぎ、イグナイターのダイアル設定を検索する。最初にヒットしたのは、知らない人のブログ。それによると、0が標準。1から4までが標準よりも進角度数が増える側で、1が2度、2が4度、3が6度、4が8度。5から9までは標準よりも進角度数が減る側で、5が10度、6が8度、7が6度、8が4度、9が2度…と判明した。
 ダイアルの設定がわかったところで、新しい疑問が…。最良が4(進角度数8度増加)なのに、セカンドベストが5(10度減少)と、調整範囲の両極端が良くて、中間の3(6度増加)や7(8度減少)は大して良くない理由が見当たらないのである。ひょっとすると、5で走ったとき(自宅〜藤枝)と4で走ったとき(海老名〜結城)の気温の差、またはスロットル開度の微妙な差(前者のほうが、やや大きめ)によるものかもしれないが、確証はない。
 今後もテストを繰り返し、うまくいけば、そのときどきの気象条件に合わせてダイアルをいじり、点火時期を微調整する…といったことができるようになるかもしれない。


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