XJ900の爽快チューン
2009年4月22日 - フロントフォークの組み立て作業と急伸時の異音
     
フロントフォークを完全に分解しなくてもできる作業の場合、インナーチューブをアンダーブラケットから抜き出す必要はない。
 その結果わかったのは、インナーチューブ先端がテーパースピンドルにかかる位置よりも浅いときには、どんなに勢いよく引っ張っても音が出ないことと、インナーチューブ先端とテーパースピンドルの勘合長が長いほど音が大きくなることと、どの場合も、ゆっくり引っ張れば音が小さくなるということだ。
 組み間違いではない自信はあったし、圧縮時にどこかが接触している手応えはないから、金属同士の接触とは考えにくい。オイルを入れる前にはスコスコ伸縮していたから、注入後に一体何が起こったのか、まったく想像もできなかった。
 が、何度も何度も伸縮を繰り返しているうちに、この音と衝撃の手応えは、水道の蛇口を急激に閉じたときに生じる“ウォーターハンマー現象”(日本語では水撃現象という)に似ているような気がした。
 不自然な姿勢を我慢しつつ、インナーチューブ上端から中を覗き込みながら、音を出してみた。すると、“バコッ”の瞬間、オイルが激しく波打っている。やはりこれは水撃みたいなものかもしれない…との思いを深くした。仮にそうなら、今この状態で音が出ていても、フォークを組み立てれば、スプリングと荷重によって動き方が変わり、インナーチ
ューブ頂部のキャップをすることによってオイルにかかる圧力も変わる(全屈時には相当なエアばねの反発力が生じる)はずだから、気にせずに組んでも大丈夫かもしれない。
 が、何しろ初めての経験なので、誰かに「問題ありません」と背中を押してもらいたくなった私は、知り合いのショック設計者に電話した。
 症状を詳しく告げると、やはりこれは、オイルロックが効くくらいフ
ォークが縮んだ後に伸びようとするとき、インナーチューブ先端下部へオイルが流れ込みにくい状態で無理やり伸ばそうとすると、その部分に大きな負圧が生じ、インナーチューブ先端内周〜テーパースピンドル外周間の隙間が急拡大する瞬間に、負圧の部分めがけてオイルが急激に流れ込むのが原因とのことだった。
 組み立てた後にも音がでるかどうかはわからないが、出なくなる可能性は高いとのこと。フォークの設計では、この“衝撃音”対策を盛り込むこともあるそうだ。そこまで教えてもらった私は、もうひとつの問題を解決すべく、作業を再開した。
 あとで、本件と関係のありそうな特許をネットで検索してみて、こういう対策を見つけた。
 最近、アンダーブラケットからインナーチューブを抜くことはほとんどない。メンドクサいことをしたくないというのが一番の理由だが、ガレージにバイスがないので、抜いてしまうとインナーチューブを支えるのに苦労するからでもある。
 そういった消極的な理由は別として、この方法には素晴らしい長所がある。ホイールという“重し”を外した状態でのフロントフォークの作動性がチェックできることだ。
 これはとても意地悪なテストであり、実走行ではもちろん、フロントホイールをジャッキアップしたくらいではわからない微小な摺動抵抗の差が明らかになる。オイルとスプリングを抜いてスムーズに動けば、それらを入れて組み立て、ホイールを取りつけ、車重がかかった状態での動きが悪かろうはずがない。
 で、今回のフォークシリンダー伸び側オリフィス面取りのときも、インナーチューブはアンダーブラケットから抜かず、左右のアウターチュ
ーブとそれをつなぐスタビライザーもそのままだった。上の写真の状態で(アクスルは抜いて)フォークシリンダー取りつけボルト(フロントフォーク組み立てボルト)を外し、フォークシリンダーをインナーチュ
ーブ上端から抜き出した。
 オリフィス面取りを済ませたフォ
ークシリンダーは、磁石で吊り下げてインナーチューブ上端から挿入。リバウンドスプリングとテーパースピンドル(オイルロックピース)を貫通し、フォークシリンダーの中心とアウターチューブ底部穴の中心が一致しているのをインナーチューブ上端から覗き込んで確認した後、底部のボルトを仮締めした。
 ここで仮締めしかしないのは、底

部のボルトによってアウターチューブに固定されるフォークシリンダーとテーパースピンドルの2点を、最もインナーチューブが摺動しやすい位置に取りつけるためだ。底部のボルトを無造作に締めると、テーパースピンドルがアウターチューブに対して偏心して固定されてしまい、インナーチューブが深く入り込んだときに強く擦れ、テーパースピンドルに偏摩耗が生じたり、オイルロックが正常に効かなかったりする。
 底部のボルトは仮締めのまま作動チェックをする。全伸位置から全屈位置まで、スコスコと非常に軽く動くのを確認。続いて、仮締めのままのボルトを正しく締めるための準備としてフォークオイルを入れる。油面調整はあとでするので、ここではテキトーに200ccくらいである。
 変な音に気がついたのはこの直後だ。フォークオイルのエア抜きのために伸縮を繰り返している途中で、全屈から伸び方向に思い切り引っ張
ってみたのだ。いくら伸び側オリフ
ィスの面取りをした直後とはいえ、手で引っ張って違いがわかるはずはないのだが、やってみたくなる気持ちはおわかりいただけると思う。
 その瞬間“バコッ”という大きな音とともに、両手に、フォークの伸びにブレーキがかかったところで何かに追突され、再び動きだしたような感じの衝撃が伝わった。
 びっくりした。これは初めて体験する現象だ。何がなんだかわからないまま、とりあえずもう一度同じことをしてみた。結果は同じく“バコ
ッ”だ。さらにもう一度同じことをするのは芸がないので、そこからあとは、スタート位置を全屈だけではなく、いろいろ変えてみたり、引っ張る速度を加減してみたりした。


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