XJ900の爽快チューン
2010年2月1日 - クランクケース内圧について考える - 減圧の危険性と問題点(1)   
     
 クランクケースの減圧には多大なメリットがある反面、クリアしなければならない問題が多い。減圧によるトラブルよりも、減圧装置が抱える矛盾を、どうやって解消するかが大変…といったほうがいいかもしれない。とにかくこれは、模倣に値する好例のない、極めてチャレンジングなテーマなのである。
 以下に、クランクケース減圧に関する危険性や問題点について、簡単にまとめておく。自作する場合はもちろん、市販されている減圧バルブを使う場合にも、装着やメンテナンスの参考にしていただきたい。

■逆止が封止になっていないか
 市販の減圧バルブに関するトラブルの中で最も危険なのは逆差しである。市販の減圧バルブの多くは、ブリーザーホースの途中に装着するため、バルブの出口と入り口の外径が同じであり、逆向きに装着できる。
 これをするとクランクケース内圧が抜けなくなり、オイルシールが抜け出したりガスケットが吹き抜けるなど、重大なトラブルに直結する。
 装着時には、説明書をよく読み、息を吹き込んでみて方向を確認するのはもちろん、装着直後にエンジンを始動し、音と手応えによる作動確認を忘れずに行いたい。
 とはいえ、ノーメンテナンスで車両の寿命末期まで使えるパーツではないのだから、少しでもトラブルの可能性を低くするために、製品本体に方向を表示したり、逆差しできないような取りつけ方にするなどの対

策を望みたいところである。
 逆差しによるトラブルの重大さを考えれば、わずかとはいえゼロではない可能性を、少しでもゼロに近づけるのは大切なことである。私が知るだけでも数件、逆差しによるトラブルを経験した人がいる。いずれもバイクいじりの経験の長い人で、だからこそ“慣れから来る気の緩み”
があったのかもしれない。
 そこで大切なのは、気を緩めないのはもちろん、それとともに、たとえ気が緩んでも間違えない(間違えにくい)ようにする対策である。
 メカニックやライダーが、整備ミスや操作ミスをしないように努力するのと合わせて、彼らに製品を提供する製造者には“メカニックやライダーはミスをするものである”との前提に立った製品開発が望まれる。

■自作や流用時はとくに慎重に
 自作や市販の逆止弁を流用する場合には、流量と開弁圧の検討が欠かせない。もとからあるブリーザーホ
ースの途中に装着する場合は、ホース内径に対して著しく開口面積が小さい物を避けるとともに、内圧変化の小さなエンジンには、開弁圧が充分に小さい(圧力変化に敏感に反応する)物を選ぶ必要がある。
 開口面積が不足した場合は始動クランキング時に内圧が抜けきらず、減圧バルブを装着しないほうが始動性がよかった…などということにもなりかねず、内圧変化の大きさに対して開弁圧が高すぎる場合も同様、減圧バルブがないほうが平均内圧が

低い…といったことになりやすい。
 内圧変化の大きなエンジン(例えば大排気量の単気筒/V型2気筒/水平対向2気筒/360度クランクの並列2気筒など)で好結果が得られたバルブでも、内圧変化の小さなエンジン(並列4気筒/180度クランクの並列2気筒など)で好結果が得られるとは限らないので注意が必要だ。
 私見では、本来クランクケースの減圧用ではない逆止弁(作動圧が高い)を流用した場合、上に書いた内圧変化の大きなエンジンでは効果が得られても、並列4気筒ではかなり難しいと言わねばならない。
 もうひとつ注意しなければならないのは、もともと減圧効果のあるバルブを備えたマシン(ドゥカティのリードバルブやハーレーのアンブレラバルブなど)に、さらに減圧バルブを追加する場合である。
 この場合の並列接続は、それぞれが完全に逆止弁として機能しているバルブを複数個装着するのとは異なり、もとからついている不完全なバルブが、あとから装着したバルブの逆止機能を低下させ、思ったほどの効果が得られない。
 直列の場合は、逆止弁としては完全でも、もとからあるバルブを経たあとの圧力変化に対してのみ、あとから装着したバルブが働くので、効果が限定されてしまう。
 これらの場合には、もとからあるバルブを撤去して装着するのが効果的。ただし、もとからあるバルブが果しているオイル除去作用をどうするかという新たな問題が生じる。


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