XJ900の爽快チューン
2010年2月15日 - クランクケース内圧について考える - 減圧の危険性と問題点(3)   
     
■ブローバイガス対策は万全か
 減圧する/しないに関係なく、クランクケース内には、常に、燃焼室から(ピストン〜シリンダー間の隙間を通って)ブローバイガスが流入している。ブローバイガスの主成分は未燃焼の混合気(HC)であり、それに加え一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄化合物などの有害物質が含まれた、極めて毒性の高いガスである。
 これを大気中に放出(ブリーザーを大気中に開放)せず、燃焼室に還元して再燃焼(酸化)させることによって毒性を和らげようというのが
“ブローバイガス還元”の狙いだ。
 道路運送車両法・保安基準第31条第21項には“(前略)ガソリンを燃料とする二輪自動車には、ブローバイ・ガス還元装置(原動機の燃焼室からクランクケースに漏れるガスを還元させる装置をいう)を備えなければならない”と書かれている。
 つまり、クランクケースブリーザ
ーの大気開放が法律違反なのはもちろん、仮に大気中に直接開放していないとしても“還元”されていなければ、それも大気開放と同じく法律違反だということである。

 いや、まあ、法律違反だ何だと言う前に、ブローバイガスというのがどんなものなのかを考えれば、それを大気中に撒き散らすなど、マトモな人間のすることではない。
 ではどうすべきか…。答は簡単。吸気フィルター〜吸気バルブ間の吸気通路のどこかに、クランクケースからのブリーザーホースを接続し、ブローバイガスが外に漏れないようにすればいいだけのこと。
 1970年代半ば以降の国産車は、もともとブローバイガスを還元する構造になっているから、それを生かしたまま容易にクランクケース減圧効果が得られる市販の減圧バルブを使えば、ブローバイガス対策に悩まされることはない。但し、エアクリーナーボックスを撤去した場合は、ブローバイガスのリークを防ぐ対策が必要なのは言うまでもない。
 続いて、強制減圧について考えてみると、吸気負圧を用いた強制減圧ではブローバイガスの全量が燃焼室に吸い込まれるので“還元率”を考えてみれば、 STDの還元システムと同等またはそれ以上であり、法的な問題は皆無と判断できる。

 問題は排気負圧を用いた強制減圧である。法文を杓子定規に解釈すれば、これはできない。還元していないからだ。上記第21項には“還元させる装置”と書かれているだけで、“どこに”還元させるかが明示されていないとはいえ、還元というのは元に戻すことだから、燃焼室から漏れるガスの還元先は燃焼室であると解するのが妥当であろう。
 ただ、還元の目的が、ブローバイガスを再燃焼(酸化)させることであるのは明らかで、排気負圧による強制減圧の結果、排気管内に導かれたブローバイガスが、そこで酸化した後に大気中に放出されるのであれば、少なくとも法の主旨には反していないと考えてよいのではないか。
 もちろん、この場合は、他の条件を同一にしたテストにおいて、従来のブローバイガス還元装置が機能した場合と比べ、排ガス中の有害物質が同じかまたは減っていなければならず、そうでなければ排気負圧を利用した強制減圧をしてはいけない。
 このあたりのことは、次号バイカ
ーズステーションの記事と、今後のダイアリーに書く予定である。


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