XJ900の爽快チューン
2011年9月29日 - ヤマハWGP参戦50周年記念メモリアルラン(もてぎ入り編)   
     
「あら〜、このタイヤ、チェーンと当たっとるがに」と、隙間のなさを気にする平野さん。笑っているのはOW76担当の山本さん。
さっそくカッターナイフでタイヤの“耳”を削ぎ落とす平野さん。私もTZ250/350(3G2/3G3)のときに同じことをした経験あり。
MotoGPチームで借りてきたベルトサンダーを使って切り口を平すのは武内さん。凸凹の切り口は、すぐに平らに仕上がった。
 8月のある日、RACERSの取材その他でお世話になっているヤマハ発動機MS開発部の北川成人さんからメールが来た。9月29日〜10月2日の日本GPの期間中、予定はあるか? なければWGP参戦 50周年記念メモリアルランにメカニックとして参加できるか?…という問い合わせだった。
 担当予定車両は、1995年型YZR500
(OWF9)で、ノリックがGPを走ったそのマシンで、彼のお父さんの阿部光雄さんが走行するとのこと。
 幸いGP期間中の予定は空いていたので、速攻でOKの返事をし、この日が来るのを楽しみに待っていた。

 他のマシン/ライダー/メカニックの陣容は、1974年型YZR500=OW20
/本橋明泰/千明(ちぎら)さん、 1984年型YZR500=OW76/平忠彦/山本さん、1985年型YZR500=OW81/河崎裕之/平野さん、2000年型YZR250
=OWL5/中野真矢/武内さん…と、メカのほうも錚々たる面々である。
 その中で、24年ぶりのワークスマシン、それも、取材で見たことしかないOWF9を担当する自分が、果たしてうまくやっていけるのか少々心配だ。しかし、この面々だからこそ、知らないことは気兼ねなく聞け、できないことは恥ずかしがらずに「で

きません。助けてください」と言える安心感のほうが大きかった。
 集合場所や期間中の行動予定がわかったのは、CP襲撃ツアーのあとだ
った。ライダーを除くメモランチームは、私を含む5人のメカニックの他に2人。合わせて7人が2台のレンタカーに分乗し、水戸のホテルとサーキットの間を往復する。
 集合は、宇都宮駅前のレンタカー営業所に29日の13時と指定された。
 この日は朝から落ち着かず、始発の新幹線で東京に向かい、10時前に宇都宮着。13時に無事、本隊と合流してサーキットに向かった。
走行のない木曜日なので、MotoGPチームのメカたちが何人も覗きに来た。やっぱりみんな、オートバイ好きなのだと再認識。横から見た形は当時物のモーリスそっくりに造られた、実走行時専用のアルミ削り出しホイール。スポーク部分の幅が広い。
 初日の仕事は、15時からの打ち合わせと、パドックの一角にあるサービスハウスを整備&夜間のマシン保管場所に/その前に張ったテントを昼間の展示スペースにするための簡単な設営のみ。サービスハウスとは別に、メモランチーム用の休憩室としてコンテナオフィスも用意されており、至れり尽くせりである(笑)。
 この環境で、現役メカ時代にお世話になった千明さんや平野さんに囲まれていると、まるで24年前にタイムスリップしたかのように、次々とヤマハワークス流のマシンとの接し方や備品の扱い方を思い出すとともに、大切なイベントでの重要な任務

を拝命したのだと自覚した。
 今回のメモランでは、どのマシンにもCP展示時とは異なるタイヤが装着されている。チューブ入りのOW20のみダンロップのTT900GPで、 その他は全車ダンロップのα12Zだ。
 タイヤサイズは、できるだけ当時に近い物を選んだようだが、OW81のリアのように、少々幅が広いケースもあり、ドライブチェーンとの干渉を気にした平野さんがカッターナイフを使って“耳”の部分を削ぎ落とすと、どこからかベルトサンダーを借りてきた武内さんが切り口をきれいに平す…と、早くも絶妙なコンビネーションによる作業が始まった。

 CP展示時との仕様の違いはホイールにも見られ、OW76とOW31(ゼッケン2の黄色いYZR750)の2台には、真横から見ればオリジナルのモーリスに見えるが、スポーク部の幅を広げて強度アップを図ったアルミ削り出しの走行時専用ホイールが装着されていた。また、OW81のホイールはCP展示時と同じながら、当時物ではなく、最近になって特注し、当時と同型状に作ってもらった物らしい。
 ガソリンは全車共通で、エルフガスのドラム缶に入ってはいるが、中身は市販の無鉛ハイオクとのこと。オイルはすでに混合済みで、現場での混合ガス作りは不要だった。
ホテルへの帰り道、コレクションホールに寄って特別展示を見学。2002年型NSR500がカウルレスで展示されていた。“挑戦者たちの再会”と称した特別展示には、ホンダとヤマハのライバル車が並んで置かれ、かつての戦いを偲ばせてくれた。明日からのユニフォーム。YZR-M1が50周年記念特別色で走るラウンドで、MotoGPスタッフが着ているのと同じシャツだった。


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