XJ900の爽快チューン
2012年5月18日 - 朝カフェの後、TRX850のフロントフォークオイル交換とセッティング
     
 30年ほど前からの私のバイク仲間で、 XJ750E、FZ750、OW01などを乗り継いだ後、20年近くバイクを降りていた“なかじぃ”さんが、一昨年あたりにFZX750でリターンライダーの仲間入りを果たし、去年の夏ごろからTRX850に乗りはじめた。
 去年の夏にちょっとだけ乗せてもらって、フロントフォークはスプリングが硬いわりにダンピングがスコスコで、リアショックは存在感が希薄で、仕事をしている感触がわかりづらい…といった印象を受けた。
“まあ、急がず、ゆっくり煮詰めていけばいい。走りのリハビリが進めば改良点も明らかになるだろう…”
と思っていたら、案の定、フォークオイルに関する相談と注文がきた。
 フォークオイルもアッシュにしたいので、適切な番手のを取り寄せて交換してくれ…というのだ。 TRXと

フィアット Puntoのエンジンオイルに、どちらも PSE MOTOSPEC 10W-40を使い、 加えてフィアットはATFもアッシュ(VFS ATF)にして、 どちらも痛くお気に入りの彼が、フォークオイルもアッシュにしたいと思うのは極めて自然ななりゆきである。
 で、まずは番手(粘度)の検討をした。 TRXのフロントフォークは、ダンピングアジャスターを装備してはいるが、今どきのカートリッジ入りではなく、ダンパーロッド(フォ
ークシリンダー)を持った昔ながらの“筒穴式”である。そうとわかれば、候補は40番または58番である。作動性重視なら40番、安定性重視なら58番というのが、大ハズレのないスタートセッティングになる。
 去年の夏、なかじぃ号のフロントフォークを伸縮させたときのことを思い出すと、フロントブレーキをか

けてフォークを“ぐっ”と縮めて戻りを待つと、伸〜縮〜伸または伸〜縮〜伸〜縮を経て元に戻っていた。極めて大ざっぱなテストとはいえ、ちゃんとしたマシンだと伸〜縮だけで収まるから、なかじぃ号は低速ダンピング不足の疑いが濃厚だ。
 さらに、彼が仕入れてきた情報によると、 TRXにどこかのフォークオイルの15番と20番のブレンドを入れて好結果を得た人がいるらしい。これらのことを考え合わせ、まずは58番を入れてみることにした。
 アッシュの58番のフォークオイルといえば、 つい最近まで私がXJ900で常用していた番手であり、粘度一覧表によると、動粘度公称値 50cSt
(センチストークス)台のワコーズのFK20、カヤバのG15S、モチュールのエキスパート・ミディアム・ヘビ
ー15Wあたりと同クラスで、40cSt台
京都の西陣(正確には千本今出川西入る南側)の喫茶“静香”。外観も内装も、古き良き時代の喫茶店そのままだ。
静香の入り口のドアに嵌め込まれた彫刻入りのガラス。他にもディテイルに凝ったところが多く、昔はモダンな店だったのだろう。
(ヤマハ、スズキ、 カワサキのG15など)と 60cSt台(ホワイトパワーの#15やカストロールのミディアム)の間に位置する粘度である。
 ただ、アッシュの場合は摺動抵抗が激減し、それによる動きすぎを抑える必要があるので1ランク硬め、もとのセッティングよりもダンピングを効かせたい場合は2ランク硬めあたりが推奨セッティングになる。車両メーカーの一般的な10番のフォ
ークオイルを入れた機種で“もうち
ょっとよく動いてコシのあるフォークにしたい”といった場合はアッシ
ュの58番がおすすめである。
 だが、これは筒穴式ダンパーに限
った話であり、カートリッジ式ダンパーや積層シムを持つリアショックには通用しないので注意が必要だ。
 で、その58番。少し前まで自分が常用していたから手元にあると思っ

ていたのに、前日に確認すると在庫なし。担当営業マンに電話をすると明日まで出張中とのことで配達してもらえず「じゃあ、朝イチに取りに行きます」ということで出荷をお願いして、京都市伏見区にある JCD西日本(アッシュ製造元直営の販社)まで受け取りに行くことになった。
 9時前に伏見区だから、うんと早起きして山回り(和束〜甲賀〜大津経由)で京都市内に入り、どこかで朝カフェしてから JCD西日本に行きたくなった。愛車の調子と気候の両方が良いと、こんなものだ(笑)。
 このところマイブームのホットケ
ーキの美味しい店で、早朝から営業しているところをインターネットで探し、見つけたのが喫茶“静香”。7時開店のその店に7時ちょうどに到着した。“平成ではなく昭和の雰囲気…”と言っても1980年代ではな

い。80年代にだって、いや、私が初めて自分の意志で喫茶店に入った70年代にさえ、もっとナウい店はいっぱいあった。バイクに例えれば1960年代以前の、程度の良い実動車とい
ったところか。ともかくそこでコーヒーとホットケーキの朝食だ。
 この店は気に入った。店主と思しきおばあちゃんも、店内の調度品の多くも、おそらく戦前生まれ。垂直に立った高い背もたれの布張りの椅子は、国鉄時代の旧型客車を思わせる。どっちを向いても、目に映るすべての物が本物のレトロで、それがとても心地よく、くつろげる。
 静香に1時間ほど滞在した後、市内を縦断してJCD西日本に寄り、 出勤直後の社員の方からオイルを受け取って帰宅。なかじぃさんが到着してすぐ整備台にTRXを載せ、 フォークオイルの交換に着手した。
回転式整備台に載ったTRX850なかじぃ号。クランクケース前寄り下部にバーを通し、パンタグラフジャッキで前輪を浮かす。
1985年の全日本選手権ロードレース鈴鹿大会で糟野御大のTZ250のメカをするなかじぃさん(手前)と私。絶妙のコンビ?
 まずは、クランクケース前寄り下部にある穴にシブイチの超ロングエクステンションバーを通し、穴の大径部にゴム管を差し込んでガタつき
&傷つき防止策をしてから、左右に置いたパンタグラフジャッキでフロントをリフトアップ。その後のやり方は、いつもの自分のバイクと同じく、インナーチューブをフォークブラケットから抜かない方式だ。
 ブレーキキャリパーとホイールを外し、インナーチューブ頂部のキャ
ップを少し緩めて、フォークスプリングの反力がフォークシリンダーにかかった状態でアウターチューブ底部のボルトを少し緩め、続いてインナーチューブ頂部のキャップを外してカラーやスプリングを取り出した後にアウターチューブ底部のボルトを完全に緩め、古いオイルを排出する。スライドメタルのスペアがない

ので、アウターチューブの取り外し(メタル損傷の可能性がある)はせず、摺動チェックだけに留めた。
 アウターチューブを上下に動かすと、ギシギシとスティッキーな動きをしていたので、ダストシールを外してチェック。それでもダメなので試しにインナーチューブ表面にシリコンスプレーを吹くと、ウソのように動きが軽くなった。ただ、これだけではすぐに元に戻りそうなので、 持続性を期待して SuperLubeの多目的グリスを塗っておいた。
 左右とも規定レベルに合わせてフ
ォークオイルを入れたところ、きっかり1リットルで過不足なし。フォ
ークオイル交換の終わった TRXを外に出し、フロントブレーキをかけてフォークを屈伸させてみると、伸〜縮だけで元に戻り、ダンピングが改善されているのがわかった。

 あとは、走りながら調整すべし…というわけで、数日前に発見したテストコースに向かった。奈良県道38号の長谷寺より少し北、バス停で言うと滝倉と剣原の間、約2kmの区間は、 XJ900だと2〜3速で回るコーナ
ーが主体の、典型的な日本のワインディングロードである。ここが気に入ったのは、カーブのRと角度が変化に富んでいる/交通量が少ない/路面の荒れた箇所が少ない/Uターンと調整に適した空き地がある…といった条件が揃っているからだ。
 このテストコースで、フロントとリアのダンピングアジャスターを締め→戻し→緩め→戻しの順に試乗を繰り返し、最もフィーリングの良か
ったところを新しいベースセッティングとした。同時に、エンジン関係には新たな課題が見つかり、TRX850とのつきあいは今後も続きそうだ。


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