XJ900の爽快チューン
2012年5月20日 - ダンロップツーリングステーションで木下恵司さんのZX-10Rと交換試乗
     
 今年2回目のダンロップツーリングステーションは、岐阜県池田町の道の駅“池田温泉”での開催だ。ここはウチから近いので、前回の箱根とは異なり前泊なし。早朝に出発して会場に向かう。 ルートは国道163
〜25(名阪国道)で亀山へ、そこから306〜365号で関ヶ原へ、そして岐阜県道53号で現地へ…と決めた。
 5時すぎにウチを出て、伊賀上野で朝マックの後、6時すぎに名阪に乗る。この時間の名阪は、昼間の混み具合からは想像できないほど空いており、マナーも比較的良好。追い越し車線を延々と走り続ける不届き者に教育的指導をする必要もなく、ハイペースで気持ちよく走れる。
 伊賀一宮から関までの東行きで私が最も好きな、関トンネルを出たところにある左〜右のS字カーブでは珍しくクリアラップに恵まれ(笑)、バイクでは過去最大のスロットル開度で駆け下りることができた。
 亀山で名阪を降りたあとの国道1
号も珍しく空いており、あっという間に306号の分岐にさしかかる。

 ここから先の国道306〜365号は、部分的に走ったことはあっても縦走は初めて。左に鈴鹿山系の山々を見つつ、その裾野を延々と、緩いアップダウンを繰り返しながら進んでいく。信号が少ないうえに道が空いていたおかげで、一瞬、時計を見間違
ったかと思うほどの短時間で関ヶ原に到達。ここまで来れば“あとちょ
っと”なので、関ヶ原バイパスの道端で小休止の後、岐阜県道53号をゆ
っくり走って、会場の“道の駅・池田温泉”の駐車場に乗り入れた。
 出迎えてくださったのは、住友ゴム工業モーターサイクルタイヤ部の小野課長。去年のマキノでお会いして以来、久々の再会である。他のスタッフへの挨拶もそこそこに、小野さんと私の2人は、いきなり濃ゆ〜いタイヤ談議で盛り上がり、気がつけばそろそろ開場の時間である。
 この日の当地は天候に恵まれ、開場前から多くのバイクが集まっている。道の駅の駐車場の一部を借りた会場にも、すでに何人ものお客さんが入っており、開場のアナウンスの

前に、すでに文字どおり“ツーリングステーション”と化していた。
 私の持ち場は、3つ並んだ黄色いテントの最も奥。ダンロップカラーのGSX-R1000の横に K300GPを履いたXJ900を並べ、 そのあたりをうろうろしながら、来場者に声をかけたりお客さんの質問に答えたりする。
 テールボックスつきだけど、外してサーキット走行もするCB1300SFに始まり、高荷重設定の足まわりによる乗り心地の悪さに悩むハヤブサ、ここにもいましたGTS1000、 爽快チ
ューンを参考にコツコツ手を加えてきたGPZ900Rなどのお客さんに、 足まわりのセッティングやメンテナンスに関するアドバイスをしたり、情報交換をしたり、ツーリング談議/バイク談議をしていると、すぐ横で全日本選手権トライアル国際A級ス
ーパークラス・柴田暁選手のトークショーとそれに続くデモンストレーション(午前の部)の準備が進む。
 柴田選手をつかまえ、最近のトライアル事情を教えてもらう。新しいことは何も知らないくせに、かつて
トークショーの演台にトライアルマシン(ホンダRTLミタニ300)を乗せて、裏で何やら打ち合わせ中の柴田選手とスタッフ。会場内のパイロンで囲ったスペースで、ウイリー、ジャックナイフ、ジャンプ、空中回転などの妙技を披露してくれた。
トライアルジャーナルの仕事をしていた関係で、聞く耳だけは持っているから、彼も話しやすかったのか、次第に饒舌になり、トークショーのウォーミングアップは完了。
 それでもまだ少々緊張気味だった柴田選手だが、デモンストレーションが始まると一転し、堂々と自信に満ちた表情に変わり、次々とトライアルの“技”を披露してくれた。
 続くは恒例の“じゃんけん大会”
である。ちょうどそのころ、真っ黒のZX-10Rが水色のマッハ3とピカピカのW650を引き連れてやってきた。
 ZX-10Rの主は木下恵司さん。私を見つけると、いきなり去年のマキノの後、ここをどうした、あそこをこうした…と、ZX-10Rのチューニングの話を始め「タイヤは、この組み合わせが、めっちゃ気に入っとるんだわ。昔のさあ、フロントにSV12を履いてたTZみたいな…」と、どんどん濃い内容になる。これは彼にも聞いといてもらおう…と、小野さんを呼んでタイヤの話を聞いてもらう。
 その間に、どこからともなく、聞

き覚えのある排気音が…。会場の入り口を見ると、okakenさんの姿が見えた。駐車場まで誘導し、停まったT120Rを、1週間前とは異なり、昼間の明るい環境でじっくり観察させてもらいながら、フロントフォークの作動性、クランクケースブリーザーの配管、テールライトの配線などについて、あれこれ意見を交わす。
 午後の部の本来の仕事は、ビラーゴ1100のドライブシャフトまわりの異音に関する診断と対策法のアドバイス、SDR(200)の前後ショックのメンテナンスとセッティングに関する質問への回答、10年前のCBR954RRに最新のタイヤを履いたときの空気圧に関する相談…などなど。
 午後の部のトークショー〜デモ〜じゃんけん大会を挟んで、それらの相談や質問にゆっくり答えているうちに、早くも閉会の午後2時に…。
 あたりを見回すと、まだ木下さんが残っていたので、 ZX-10RとXJ900の交換試乗を提案。まずは木下さんがXJ900に乗り、 近所をひとっ走りしてきた。戻ってきて、ヘルメット

を脱ぐなり「リアブレーキ、効きすぎ!」と言われ、続けさまにダメ出しを食らうかと覚悟すると、そうではなく「この足まわり、いいねえ。これだったら、1日中走って、どこまででも行けるって感じ」と、お誉めの言葉をいただいた。
 さらに木下さんは「サーキットなんかで飛ばすんだったら、もうちょ
っと固めのほうがいいだろうけど、前後のバランスはいいから、これを崩さんように」とのコメントをくださった。インプレが足まわりに集中しているので「エンジンはどうでした?」と聞くと「思ってたよりよく走るし、気持ちよく回るから、これでいいんじゃない?」とのこと。
 続いて、私がZX-10Rを借りて走りだす。常用速度域が違うから(笑)、設定荷重は異なるものの、動きやすく、わかりやすく、荒れた路面での吸収性と追従性を高める…という、私のバイクと同じ方向でセッティングを施したらしい足まわりは、駐車場内でのUターンからして楽で、スロットルの開閉に伴うピッチングが
小野さんを前に、タイヤやマシンについて熱く語る木下恵司さん。ZX-10Rは、リアにα-12Z、フロントにGPを履いていた。XJ900の試乗を終えて戻ってきた木下さん。リアブレーキの効きすぎ以外、現状のセッティングを気に入ってもらえたようだ。
自然でわかりやすく、コーナリング中に路面の凹凸を通過したときの挙動に神経質なところがなく、変に緊張しなくていい。スーパースポーツというよりもネイキッド的な親しみやすさを持ちながら、運動性は高く操る楽しみを味わわせてくれる。
 ハンドルバーを1cm高くした(それに合わせてスクリーンも高めた)というポジションは、ゆっくり流しているときの手首の負担を軽減してくれ、ハンドリングの自由度確保の点でも好ましい。欲を言うなら、高さはこのまま、グリップをあと1cmずつ内側に入れたいところだ。
 残念ながら、このマシンが本領を発揮するであろう、路面の荒れた50
〜200R程度のコーナーを飛ばしたときのインプレは、場所がなく、ライダーの腕も伴わないので何とも言えない。しかし、道の駅の近くの山道を軽く流しただけでも、同じダンロ
ップでありながら前後に異なる種類のタイヤを履かせた木下さんの狙いはよくわかった。グリップや耐久性からの要求ではなく、おそらくこの

組み合わせが、最も彼好みの操安性を実現してくれたに違いない。
 駐車場に戻って「あと1cmずつ、グリップが内側にあるといい…」と話すと、木下さんは我が意を得たりとばかりに「そうでしょ! ボクもそう思って頑張ったんだわ」と、これまでの苦労の跡を見せてくれた。なるほど、クラッチアジャスターのストッパースプリング(板バネ)を斜めに削ったり、トップブリッジの縁を丸めたりしてあるのがわかる。「もうこれ以上できないと思ったけど、そう言われると、やっぱり、もうちょっと何とかやってみるわ…」と、嬉しそうに答えてくれた。
 木下さんを見送り、イベントの撤収を手伝い、スタッフの方々に見送られて会場をあとにしたのは午後4時ごろ。帰りは国道21〜8〜307…とつないだ、行きとは違ってけっこう単調なツーリング。どこかでお茶でも…と、関ヶ原あたりからずっと探しながら走っても、入ろうという気になる店は見当たらず、彦根市内をぐるぐる回っても、いわゆる“喫茶

店”は、どこも開いていない。このあたりで、日曜日の午後5時すぎに自分好みの店を見つけるのは無理とあきらめて307号を甲賀へ向かう。
 このあたりに来ると、いつも寄りたくなるのが喫茶“蔵四季”とガレ
ージ丸八だ。お茶は、途中の道の駅愛東の自動販売機で我慢したので、今日は丸八へ。しばらくぶりに店主の大矢くんと四方山話の後、 XJ900に試乗してもらった。大矢くん曰く「まるで今どきのバイクみたいですね」とのこと。それを狙ったわけじ
ゃないし、それだけでもないはずだが(笑)、初めてまたはう〜んと久しぶりに乗った人が、第一印象としてそう感じるのはよくわかる。
 なおも大矢くんと話していると、次第に西の空が暗くなり、今にも降り出しそうな空模様になってきた。これはヤバい。今日はカッパを持っていないのだ。…というわけで、ガレージ丸八を出て家路を急ぐも、あと10分ほどのところでついに降りだし“雨を呼ぶ男”らしいワンデイツ
ーリングのエンディングとなった。


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