XJ900の爽快チューン
2011年10月20日 - YZF750SPのクラッチハウジングを移植。ボルト+ナットを溶接   
     
3GM(FZR1000)のクラッチハウジングを使ったXJ900のプライマリードリブンギアコンプリート。ダンパースプリングが折れている。
リベットを抜くために、センターポンチを打った後、ドリルを用いφ4、φ6の順に穴を貫通させ、最後にφ8で頭部を潰した。
FZR1000のクラッチハウジング(下)と、今回入手したYZF750SPの物(上)。広がり防止の輪がレーサーふう。
リベットの締結力がプライマリードリブンギアにかからないよう、貫通部分にカラーを配置。また、長穴により剪断力も回避。取り外したリベットとカラー。リベットの軸部外径は8mm、頭部外径は12mm、頭の高さは2mm。カラーの長さは6mmである。
 もてぎに行く直前に届いたYZF750
SPのクラッチ一式。どうやってこれを発見したのかは、ひとつき以上も前の話なので忘れてしまった(笑)。ただ、ウチにある2個のXJ900用プライマリードリブンギアコンプリート(58L-16150-00。1個は使用中、1個はダンパースプリングが折損していた)のクラッチハウジング部分に、片方は31A、もう一方は3GMの浮き文

字があることから、微妙に形状は異なるものの基本寸法は共通に違いなく、だとすればクラッチプレート/フリクションプレート/クラッチボス/プレッシャープレートなどは、FZ/FZR系の多くの機種と互換性があるはずなので、それらの機種用のクラッチパーツを検索していたのは覚えているから、その途中でこいつが検索に引っかかったのだろう。
 オークションの写真を見ると、クラッチプレートとフリクションプレ
ートはほぼ新品。クラッチスプリングも新しそうだし、クラッチハウジングやクラッチボスの段付き摩耗も軽度なので、とりあえずクラッチボス/クラッチプレート/フリクションプレートを流用すべく落札した。
 ところが、届いたクラッチハウジングを見た途端、何としてでもこれ
クラッチハウジングのプライマリードリブンギア側接合面。YZF750SP(左)もFZR1000も同形状/同寸法だ。鉄製の裏板はYZF750SP用、XJ900用とも同形状/同寸法。矩形断面の穴の側面が駆動/制動力を受ける。XJ900のクラッチハウジング部に見える“3GM00”の文字。これにより、FZR1000用の鋳造パーツを流用していると断定。
を使いたくなった。理由は“カッコいいから”である(笑)。加えて、軽そう/整備性が良さそう/オイル切れが良さそうな気がしたので、もてぎから帰ってきてさっそく、これを移植する方法を考えはじめた。
 考える…たって、現物が目の前にあるのに、手を出さないで我慢できるわけがない(笑)。落札したYZF750
SPのも、ダンパースプリングが折れ

たXJ900のも、 どのみちそのままでは使えないのだから、両方とも、各3本のリベットをドリルでもんでプライマリードリブンギアを外し、クラッチハウジング単体にした。
 バラバラにした各パーツを測定の結果、裏板は同パーツ、ハウジング裏面の形状と寸法も(ダンパースプリングの入る凹みも)共通だとわか
った。残念ながらクラッチハウジン

グの重さはたった10グラムしか違わず、少々がっかりだが、重くなるよりはマシだと納得した(笑)。
 この測定により、 XJ900のプライマリードリブンギアにYZF750SPのクラッチハウジングを取りつけて使えることが確定したので、いよいよ本気で“どうやって留めるか”を考えなければならなくなった。
 もとがリベットだから、最初はも
クラッチハウジングとプライマリードリブンギアの間に挟まれる皿バネとスプリングシート。軸方向のガタを押さえるための構造だ。
形状修正/バリ取り/掃除などを終えたFZR750SPのクラッチハウジングを裏返して台上に置き、組み立て準備が完了。
まずは中穴周囲の段付き部分にスプリングシートをセット。皿バネのエッジでアルミパーツが削れないようにするための物だ。
続いて皿バネをセット。スプリングシートの役割を理解し、皿バネの接触痕を見落とさなければ、裏表を間違う心配はない。
ダンパースプリングは、強い方はXJ900もYZF750SPも共通だが、弱い方にはレートの高いYZF750SPの物を使用した。
ちろんリベット留めを考えた。
 このテのリベットは“薄平リベット”と呼ばれ、軸径6mmまでなら容易に入手できるのに、8mmの物はなかなか見当たらない。それに、運よく入手できたとしても、カシメるのが大変そうな気がした。もうちょっと考えて、どうにもならなければ、最後の手段として、どこかクラッチを作っているメーカーに持ち込むこ

とも頭の隅に思い描いていた。
 一方で、ここはリベット留めではあるけれど、剪断力はほとんどかからず、ただ単純にクラッチハウジング+カラー+裏板の3点が広がらないように留めているだけであり、広げようとする力(リベットにかかる引張力)もまたそれほど大きくない(だからこそリベット留めで充分)ことがわかった。おそらく、ここが

リベット留めなのは、ボルト+ナットよりも頭を低くできるのと、絶対に緩んでほしくないのの両方の理由によるものだと思われる。
 いろいろ調べているうちに、社外品のクラッチハウジングの中には、ハウジングにメネジを切ってプライマリードリブンギアをボルト留めしたり、ボルト+ナット留めにしてしまう物があることがわかり、緩み止
プライマリードリブンギアをセット。強い方のスプリングの両端には隙間があり、2種のバネによってプログレッシブ効果を得ている。
カラーの長さをギアの厚さよりも微妙に長くして回転方向の動きを保証。スプリングが全屈しても剪断力はかからない。
最後に裏板をセット。こちらはクラッチハウジングと一体になるから、スプリングの両端に隙間を設けず、傾きを防止している。
めさえ何とかすれば、ボルト+ナットで充分のような気がしてきた。
 ただ、カシメた状態のリベットを測ったところ、頭部もカシメ部も、どちらも高さ2mmしかない。これでは、ボルト頭側はともかく、ナットとのネジのかかりが1周少々しかとれず、危険である。やはりリベットしかないのか…と、諦めそうになったところで、片側だけでもいいから

頭の高さをもう少し増やせないものか、各部の隙間を測定/計算した。
 すると、手前(クラッチボス)側は2mm程度でなければクラッチボスの裏面と接触するのに対し、裏側は裏板の表面とミドルドライブシャフトの端面の間に、約5mmのクリアランスがあることがわかった。
 約5mmのクリアランスがあるのなら、M8用に普通に売られている中で

最も背の低い4mmのナットが使えそうだ。これなら、ネジのかかりは3周ほどある。仮に4mmのナットが入手できなくても、適当な高さのナットを削れば問題ないはずだ。
 ボルト側は、M8の六角穴付きボルトの頭部外径が、もとのリベットの頭部外径よりも大きいことは確認済みで、こいつの頭をサンダーで2mmまで落とせばよい。ネジ側は、最低
コーナンプロで買った六角穴付きボルト。カラーを挟むから当然、円筒部の長さを合わせた。頭はサンダーで削った。クラッチハウジングの内側から通したボルトを、カラーと裏板に貫通させる。頭部外径はリベットより2mm大きいが支障なし。頭の六角穴がなくなっているので、ネジ先端をバイスプライヤーで挟んで回り止め。ナット締めつけ力は10Nm程度に留めた。
限必要な長さ25mmのボルトでは全ネジになってしまうので、円筒部の長さが(不完全ネジ部を含み)15mmを超えない範囲でできるだけ長い物を選び、締めつけたあとで不要な部分をカットすることにした。
 作業手順は、M8の六角穴付きボルトの頭を高さ2mmまで削り落とす→

プライマリードリブンギア+クラッチハウジング+スプリングシート+皿バネ+ダンパースプリング+カラ
ー+裏板をセットする→下からボルトを通す→ナットを締めつける→ナ
ット+ボルトを高さ4mm以下にサンダーで落とす→ボルトにナットを溶接する…と決め、必要なパーツを持

参してグローリーホールに行き、名手・佐川くんに溶接してもらった。
 溶接棒は使わず、ボルトとナットの共付(ともづけ)溶接である。さすがに名手の溶接痕は美しく、境界面への溶け込みも充分な深さに達していると思われ、リベット留めと同様、安心して使えそうである。
締結後、裏板からの突き出し高さが5mm以下になるようにサンダーで削り落とした。リベットの代用なので締結力は弱め。
アルゴン溶接機を用いてボルトとナットを共付溶接。経験/勘/場数/目的の理解、いずれも佐川くんなら安心だ。
せっかく美しく溶接してもらったのに、事前のサンダーがけがやや傾いていたようだ(笑)。溶け込み深さは充分ありそうだ。


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